
外壁塗装は「工程理解」で失敗を防げます
外壁塗装は家を長持ちさせるための大切なメンテナンスです。どんな順序で工事が進み、施主は何を確認すべきかを知っておくと、品質の見極めやトラブル回避に役立ちます。本記事では初めての方にもわかりやすく、見積から引き渡しまでの標準的な流れと要点を整理します。
着工前の準備と近隣挨拶
工事開始の1週間前を目安に、両隣・向かい・裏手へ挨拶と工事案内を配布します。工期、作業時間、高圧洗浄日、足場設置日、連絡先を明記しましょう。庭木や自転車、物置周辺の可動物は移動し、貴重品や割れ物は屋内に避難。ベランダの荷物を減らすと養生がスムーズです。
足場設置とメッシュシート
足場は安全作業と高品質施工の土台です。組み立て時は金属音が出やすいため、事前告知が重要になります。ここからは足場に関連するポイントを二つに分け、施主が確認しやすい視点で解説します。
足場の品質と転落防止の配慮
・作業床の幅、手すり、踏板の固定状態を現場管理者が点検
・昇降口の位置が出入りに支障ないか、通行導線を確保しているか
・メッシュシートで飛散を抑制、近隣車両に養生カバーを用意
設置時の注意と施主チェック
・雨樋やテラス屋根、配線への当たりを確認
・設置後に隣地へ一声かけ、車の移動が必要な日を共有
・足場の設置写真を記録として保管してもらうと安心
高圧洗浄で汚れと旧塗膜を落とす
洗浄は塗料の密着を左右する重要工程です。使用する水圧や洗浄時間、乾燥時間の確保がポイントになります。以下の小セクションで、品質と安全の両面を確認しましょう。
洗浄の品質基準
・コケ・藻・チョーキングを丁寧に除去
・ベランダやサッシレール、雨戸など付帯部もあわせて清掃
・洗浄後は最低でも一晩以上の乾燥時間を確保
生活面の配慮
・洗濯物は屋外干しを控える日を事前通知
・窓の開閉制限、車両養生の有無を案内
・排水の流れを確認し、近隣敷地に流れ込まないよう調整
下地調整・補修・シーリング
塗装は下地づくりが命です。ひび割れや目地の劣化を放置すると、仕上げが美しくても長持ちしません。次の二つの観点でチェックを進めましょう。
補修の内容と優先順位
・ひび割れはVカットやフィラーで補修
・サビ部はケレン(素地調整)後、防錆下塗り
・素地に合わせたパテや樹脂を選定し平滑性を確保
シーリングの打ち替え/増し打ち
・窯業系サイディングは基本「打ち替え」推奨
・プライマー塗布と目地奥行・厚みの確保が耐久性を左右
・色は仕上がりに合わせて選定し、はみ出しを最小化
養生で仕上がりの輪郭を整える
養生は塗らない場所を守る工程です。ここが丁寧だと、塗り分けラインがシャープになり完成度が上がります。養生の良し悪しを見極めるポイントを続けて確認します。
養生の基本
・サッシ、玄関、床、植栽、車両、室外機、インターホンを保護
・開閉が必要なドアは仮設養生で出入り確保
・見切りラインにマスキングテープを正しく密着
生活制限と連絡体制
・窓が開けづらい期間と換気方法を案内
・ゴミ出しや来客の動線を事前に共有
・緊急時の連絡先を紙面で配布
下塗り(プライマー/シーラー/フィラー)
下塗りは素地と上塗りを密着させる接着の役割です。素材や劣化状況に応じた種類選定と、既定塗布量の確保が重要となります。以下の二点を軸に見極めましょう。
材料選定と塗布量
・サイディングは浸透性シーラー、モルタルは微弾性フィラーなど素材適合が前提
・メーカー規定の希釈率・塗布量・乾燥時間を遵守
可視化と記録
・ロット番号の記録、缶写真の提出
・下塗り後の吸い込みムラやピンホールを点検
中塗り・上塗り(仕上げ工程)
一般的に同一上塗り材を2回塗りします。中塗りは色を乗せて下地を整え、上塗りで艶と耐候性を確保します。ここでは色・艶・塗膜厚の観点で確認します。
色・艶と塗り重ね乾燥時間
・指定色・艶の再確認、塗り重ね可能時間を厳守
・気温・湿度に応じて作業時間を調整し、塗膜不良を防止
均一な仕上がりと端部処理
・ローラーむら、刷毛目、透けの有無を距離を変えて確認
・見切りや取り合い部のラインを直線で通す
付帯部塗装・屋根・ベランダ防水など
破風、鼻隠し、雨樋、雨戸、シャッターボックス、鉄部、木部は素材が多様で、専用下塗りが必要になる場合があります。屋根塗装やトップコート更新を同時施工すると足場共用で効率的です。
中間検査・最終検査・手直し
工程ごとに写真を撮影し、見積の範囲通りに施工されているかを確認します。仕上がりの傷や塗り残し、養生跡、色番違いがないかを最終検査でチェックし、必要に応じて手直しを実施します。
立会い時のチェックリスト
・外壁のムラ、ピンホール、たれ、刷毛目
・付帯部の塗り残し、見切りラインの直線性
・窓や玄関の汚れ、ドレンや排水の詰まり
記録と引き渡し書類
・施工前中後の写真台帳
・使用材料一覧、保証書、工事完了報告書
・アフター点検スケジュール(例:6か月・1年)
足場解体・清掃・引き渡し
最終検査と手直し後、足場を解体します。解体時に外壁や付帯部に傷がつかないよう養生を継続し、敷地内の清掃を実施。近隣へのお礼挨拶も忘れずに行いましょう。
工期の目安と天候リスク
一般的な戸建で10〜14日が目安ですが、雨天や強風、低温・高湿度によって延びることがあります。無理な強行は品質低下につながるため、契約書に天候順延の扱いを明記しておくと安心です。
よくあるトラブルを避けるコツ
・相見積は同条件(塗料名、下塗り種別、塗布量、艶、保証年数)で比較
・変更点は都度書面化し、口頭約束を残さない
・塗り分け位置やコーキング色は立面図で指定
・工程写真を必ず共有してもらう
・近隣への告知と駐車配慮を徹底
見積・契約時に確認すべきこと
・塗料メーカーとシリーズ、色番号、艶の明記
・下地補修(数量と範囲)、コーキング打ち替え/増し打ち
・足場、養生、高圧洗浄、付帯部塗装の範囲
・塗布量、乾燥時間、施工手順、写真台帳の提出
・保証内容(対象範囲・年数・免責)とアフター点検
求人情報|外壁塗装の現場スタッフを募集しています
塗装の品質は「工程を守る力」で決まります。私たちの現場では、未経験からでも段階的にスキルを身につけられる教育体制を整えています。ここでは仕事内容と求める人物像、成長イメージを紹介します。
主な仕事内容
・足場設置補助、資材搬入、近隣挨拶の同行
・高圧洗浄、養生、下地調整、コーキング
・下塗り・中塗り・上塗り、付帯部塗装
・清掃、写真記録、最終検査の補助
求める人物像と待遇の見方
・安全第一、時間厳守、挨拶ができる方
・チーム作業が好きでコツコツ丁寧に取り組める方
・色や建築に興味がある方(提案の幅が広がります)
待遇は社会保険、資格手当、制服・道具支給、交通費、評価制度、悪天候時の賃金取り扱いを確認しましょう。直行直帰の可否や車通勤の可否も面接で質問するとミスマッチを防げます。
キャリアパスと資格取得支援
入社後は先輩のもとで基礎工程から学び、建築塗装技能士、有機溶剤作業主任者、足場の組立て等作業主任者などの取得を目指します。現場リーダー、品質管理、営業・現場監督へとステップアップ可能です。写真台帳の作成や工程管理スキルは、将来どの職種でも活きる資産になります。
まとめ|工程を知れば品質が見える
足場→洗浄→下地調整→養生→下塗り→中塗り→上塗り→付帯部→検査→引き渡しという流れを理解すれば、良し悪しの判断がしやすくなります。施主は要所でチェックし、書面で仕様を管理。就業希望者は「工程を守る姿勢」を武器に、確かな技術を積み上げていきましょう。